―――――この地の空気を吸うのも、

               随分と久しぶりのように感じる…




00:帰還・再会・そして―――旅立ち









「カーティス大佐!」


蒼銀色の短い髪を揺らしながら、此方へ駆けてくる男が見えた。

「どうも、ご無沙汰振りですー」

栗色の長い髪の男が歩きながら、その男の前まできた。


「本当に生きておられたのですね!ご無事で何よりです」

「はい。それより、陛下に謁見願いたいのですが」

そう言ってのけるのは、彼の地が消滅してからはたりと行方が掴めなくなった、
この国の軍人であり、皇帝の懐刀と名高い、且つ死霊使いとして軍属の間で恐れられている男。
眼鏡の下に映える、ガーネットの如く澄んで紅い、見透かすような瞳が印象的だ。


――――本当に…あの惨事の中、よくご無事で…

「丁度、テオルの兵から連絡を受けた所です。陛下は謁見の間でお待ちしています」
「判りました。私は謁見の間で陛下に事態を奏上して参ります」

「それで将軍、森の入り口で大切な証人達を待たせてあるのですが、
陛下の許可を得ましたら、お迎えをお願いしても宜しいでしょうか」
「それも報告を受けています。陛下の命が降りましたらすぐ迎えに行きます」


「お願いします」

そう言うと、その場を離れた。





そして何故か…少しずつ足が速くなっていき、



気がついたら、走っていた。






久しぶりに目にする荘厳な宮殿の扉を開け―――


謁見の間へと。








「マルクト帝国軍第三師団師団長ジェイド・カーティス大佐、只今帰還致しました」

謁見の間の広大な絨毯の上、男は自らの主に跪く。


「よく戻ったな。報告を聞こう」




玉座に鎮座する一人の男。
この国の皇帝であり、自身の幼馴染でもあるその男は


出で発った日より、何も変わらずそこに居た。




唯々、
             ―――――只管、そこに居た。


自分を見据える澄んだ蒼碧の瞳は、あまりに真っ直ぐで眩しくさえ思えた。
その瞳をまっすぐ見据え、事の粗筋を奏上するその男の姿もまた、
周りの兵士には、奇跡に見えたのだが。




「―――以上で御座います」


「了解した。その者達の入都を許可する。
フリングス少将へ伝令だ。その者達を直ちに此処へ」
「御意」


そうして、皇帝の言葉を承った兵士が一人、フリングス将軍の元へ向かっていった。




「護衛兵、全員下がってくれ」
「はっ」


突如そう言われた護衛兵達は戸惑いながらも謁見の間からそそくさと立ち去った。




「……………」



謁見の間に陛下と二人で取り残されたジェイド。
すると、今まで玉座に鎮座していた男がすっくと立ち上がり、
ずかずかとジェイドの方へ歩み寄ってきた。




そして、抱擁を交わす。否、正式には、一方的に陛下がジェイドに抱き付いただけだが。


「陛k… 「お前、また痩せやがったな?」
「…は?」
「ちゃんとメシ食ってなかったのか」
「…いえ、そんなつもりは微塵も有りませんでしたが」

「と、言いますか、暑苦しいので離れて下さい」
「何だよ冷てぇな。折角久々に会ったってのに、その白々しい態度は何だ」

文句を言いながらも、疲労しているであろう幼馴染を労わる意味でも、ピオニーはジェイドから少しだけ離れた。

「はぁ…」
「薄ら納得すんじゃねぇ」


「それで、今までどこ行ってやがったんだ?何故便りの一つも遣さなかった」
「陛下。それは…」
「だァアァわぁかってる。この状況で便りなんか送ったって、
怪しまれて危険物扱いされて、俺の手に届く前に廃棄されちまうってんだろ」
「はい」
「あぁああもう。それでも、納得行かねぇ。ったく、人がどれだけ心配したと…」

「…すみませんでした」

「あ?…馬鹿野郎。お前が謝る事じゃねぇだろ」
「…はぁ…」


ジェイドは、先程迄威厳のあった皇帝の面影が全く感じられない程、
落ち着きのないピオニーの態度に、心中で苦笑した。



「とにかく、ちゃんとメシを食え!いいな」
「はいはい」
「『はい』は一回だろ」
「はい」






「…驚かれないのですね」

「何に」


「私が生きている事」

「馬ぁ鹿。お前が死んだなんて端から思っちゃ居ねーよ」
「おや、何故です?」
「理由なんてネェ。ただ、皇帝の懐刀がそんな簡単に死ぬ訳がネェ。だろ?」
「…この場合、何と答えれば宜しいですか?」
「俺に聞くのかそれを」



「…………」

沈黙が一瞬あったかと思えば、ピオニーがふっと笑みをこぼした。

「待ってたぞ。ジェイド」

「長らくお待たせしてすみません」


答える側もまた、頬がわずかに緩んでいた。









ガチャ…


「陛下、御謁見の方々がお見えになりました」


「おう。通してくれ。護衛兵、配置に戻って良いぞ」
「はっ」



そうして、謁見の間に再び僅かな賑わいが訪れた。











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お読み下さってありがとうございますッ!!
さて、いよいよ始まりました、TOAピオニー参戦パラレル小説ですが、
早速幸先が危ういですッ!(ぇええ
そもそも何なんでしょうねこの臭い演出は。
なんかシリアスな雰囲気で始まりましたが、
ギャグの話もちょくちょく(主にピオニーが参加している時)出てくると思いますw

今回は再会の話でしたが、ピオニー陛下の動向がいまだに判り辛いので、
正直言って皆さんのイメージと違ってしまっていると思いますが、
管理人は勝手にこんな感じ〜と想像してやってますので、その辺は、大目に(ぇ

今更ですが、時勢は「アクゼリュス崩落後・最初のグランコクマ来訪」辺りです。(遅



07/7/24(Tue)