03:叶わぬ思い程よく募る





「陛下、どうして此処に!?」

真っ先にティアが問う。

「いやな、どーしてもセントビナーの様子が気になっちまって」

ちゃらけながら言う陛下を見て、周りの全員が訝しんだ。


そんなメンバーを他所にジェイドは一人、溜め息を吐く。

「陛下、とにかく此処は下がって下さい。あの馬鹿が、また何かやる気です」
「馬鹿とは何ですか馬鹿とは!嘗ての親友になんて酷い事を言うのですか!」
「ほ〜ぅ、サフィール。お前随分と態度がでかくなったじゃねーか?」
「全く、どこの誰が貴方の親友だと言うのですか」

「キィイ!二人してまた私をからかうのですね!ふん。
ジェイド!そんな奴らと共に居ること、絶対に後悔させてあげますからね!」


「私の技術の結晶!行けーカイザーディストRX!!」



その声と共に現れたのは、ディストお得意の譜業兵器、カイザーディスト号RX。
前回キャツベルトの上で戦闘したものと外観はほぼ変わらないが、
ディスト曰く威力は格段にUPしているそうだ。
果たして本当かどうかは別として。


「全く、本当に空気の読めない馬鹿ですね」
ジェイドがコンタミネーションで槍を出す。

「陛下、下がっていt 「ぉおっと、ジェイド。下がれなんて言うなよ?」
ピオニーを見れば、顔は自信の笑みが浮かんでいる。
「陛下!冗談を言っている場合では…」

「冗談なんかじゃないぞ?本気だ」

「ダメです!」
「んじゃ勅命だ。俺も戦闘に参加するから、お前は俺を守れ。」
「…!全く、貴方という人は、こんな時だけ職権を乱用するなど…」
「勅命だ。」

「…ッ御意」


「ルーク!ティア!援護を!」
ジェイドが指示を出す。

「お…おぅ!!」
ルークが慌てて戦闘に参加する。

「はいッ!」

ティアも詠唱準備に入る。


「ガイ、アニス、ナタリアは引き続き避難の支援をお願いします」

「はいよ、旦那」
「了解です〜大佐w」
「分かりましたわ」



「よし、いくぞ!」

ピオニーが標的に向かって駆け出す。
その少し前をジェイドが行く。


「陛下、あまり無茶なさらないで下さいよ」

「ああ?何の為にお前が居ると思ってる」

「…はぁ」

(所詮は不毛な願いですか…)


ジェイドは内心で一生分の溜め息を吐いた気分になった。




「うりゃー!閃光墜刃牙!!」

ルークの技が決まる。

すると、横で誰かの舌打ちが聞こえた。
「チッ。俺より目立ちやがって、ルーク、見てろよ!!」

舌打ちの主はピオニーだった。


「オラァ!必殺・昴龍礫破!!!」

ピオニーの技も見事に決まる。

「うぉお!陛下って意外とスゲーな!」
「おお?だろだろ?」

「二人とも、気を抜いているとやられますよ―――天雷槍!!」

ジェイドの一撃を食らって、カイザーディストRXが少し怯んだ所へ、


「―――エクレール・ラルム!」

ティアの強烈な一撃が放たれた。

「ひゅ〜ティアちゃんカッコイイねぇ〜」



目の前で愉快に繰り広げられる、彼らのやり取りに、ディストは機嫌を益々損ねていった。

「あぁああ貴方達ッ!!戦いの最中に、何ですか!もっと真面目に…」

「あぁ、すみません。そう言えば貴方も居たんでしたね」
「なーんですかその言い方は!まるで今まで忘れていたかのようなッ!!」
「ええ、忘れていました。」
「何ですってーー!」

―――牙連崩襲顎!!とぁ!たぁ!!

「おお、サフィール、お前もそんなトコに居ないで、こっちに降りてきて一緒に戦わないか?」

――はっ!やぁ!バニシングソロゥ!

「二人して私を無視しておいて、なんですかその言い方は!」

―――でりゃ!これでどーだ!空破絶風撃!

「硬いこと言うなよー。俺達皆親友だろー?」

―――ッさせない!

「私を含むのはやめてくださいね陛下」

―とぁ!!たぁ!!双牙斬!魔王絶炎煌!

「何だジェイド。お前は俺の親友だろ?」

―――ファーストエイド!…ッ気をつけて、かなりの衝撃よ!

「ご冗談を。これ以上馬鹿がうつると困ります」

――――守護方陣!



「何だよ連れないなぁジェイドはv」
そう言って何気にジェイドの肩に手を回すピオニーを見て、ディストは苦悩する。


「ピオニー!!!私の目の前でジェイドに絡むとはどういうつもりですか!」

――――エクレールラルム! ルークFOFが発生したわ!


「どういうもこういうも、見ての通りだが?」

――――食らえッ!斬魔飛影斬!!…くっ!まだなのか!?


     「…っておい、ジェイドッ!!!」



「…陛下、離れて下さい。そろそろ戦闘が終わりますよ」

彼らがそんなことをしている間、ディストの指示が無くなって
適当に動き回るカイザーディストRXに向かって、ルークとティアがずっと戦闘を続けていたワケで…


「ホーリーランス!!」

ティアが放った一撃で、再び光のFOFが発生し、その上でルークが技を発動する。

「くらえ!翔破裂光閃!!!」

ルークの技は当然の如くクリティカルヒットし、カイザーディストRXは特殊ダウンに陥った。

「―――― ホーリーランス!!」

ティアがもう一発追い討ちをかける。
そんな時、ダウンしているカイザーディストRXの下に発生したFOFをルークが使う前に消えた。


「全てを灰燼と化せ―――

        エクスプロード!!




「お別れです」

「くぁあああ!美味しいトコだけ取って行きやがってェエ!」


ルークの嘆きが聞こえる。

ジェイドの強烈な一撃がクリーンヒットし、カイザーディストRXは無残にも粉々になったのだった。

「ジェイド、お前いつの間に詠唱なんてしてたんだ?」
「陛下が馬鹿とお戯れになっている間にですよ?」

「あぁああ〜〜!!!私の可愛いカイザーディスト号RXがぁ!!!ごふっ!」
粉砕爆発を起こしたカイザーディスト号の破片がディストに命中し、
ディストも共に吹き飛んでいってしまった。


「…なんだったのかしら」

ティアが、ディストが飛んでいった方を見て呟いた。


「アイツ本当に暇だなーはっはっ」
なんて呑気に言いながらピオニーが笑っていると、ジェイドが後ろでぼやいていた。
「全く、馬鹿ばかりで困ります」



「陛下。とにかく、今回は相手が奴だったから簡単でしたが、
今後、このような危険な真似は…」
「断る。ジェイド、この旅に俺も参加することにした。」


「…は?今何と」

「だから…」



「俺もこの旅に付いて行くことに決めた」




「「「「「「……はぁあ!!!??」」」」」」



「陛下、ご冗談も大概に…」

「冗談じゃない。俺は何時だって大真面目だぞ?」

「貴方はご自分で何を仰っているのかお分かりなのですか?
この旅では、どう動いてもいずれもっと手強い敵と戦うことになることは否めません。
まして、相手はあのヴァンですよ。
一国の帝である貴方が、このような危険な旅に同行するなど…」

「分かっている。だが…自国の民を守るためでもあるし、何より…」


「何より?」


「お前の傍にずっと居らr 「わーかりました。」



米神に再び青筋をいくつも浮かべ、冷や汗を掻いているジェイドなど、
正直、陛下が居なければ拝むことなど出来なかっただろう。
メンバーは一概にそう思ったのだが、そんなことをジェイドが知る由も無い。

「よぉーし。決まりだな!皆、これからは宜しくな!」



「あ、俺の事は陛下って呼ぶなよ?因みに女性陣は俺の事、ピオ君って呼んでくれw」
「陛下vあまり次元の低い会話は御慎み願えませんか?」

笑顔を浮かべては居るが、どこか黒いオーラが滲み出ているその笑顔に
ピオニーは慣れてはいても恐れはするということで、
とっさにティアの後ろに隠れたのだった。

「ティアちゃん、あの陰険鬼畜眼鏡がコワイ〜」

「…陛下…」
ティアが困り果てていると、ピオニーが更に。
「ティアちゃん、俺の事はピオ君と呼ぶんだぞ!や、でもティアちゃんなら呼び捨てでも良いかもw」
「ぇええ…?」

「陛下、お戯れも大概にして下さい。ティア、そんな馬鹿は放って置きなさい。
それより、セントビナーの市民の避難を急ぎましょう。」

「はい」
「おっと、そーだったな」

ピオニーも気を取り直す。そして全員で避難誘導作業へ戻った。


それから少し経って、急に激しい揺れが起こり、一部の市民の救出が出来ないまま、地面に亀裂が入ってしまった。
ガイの提案で、飛空挺の譜業技術が確立されたと噂されている職人の町シェリダンに向かうことになった。








      

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カイザーディスト戦でしたー。
ピオニーが漸く正式(?)に旅に付いて来ることが決定しましたーw
やっと此処から、どばーっと陛下が出てきます^^
ジェイドとの絡みがかなり少ないですが、
もともと、ギャグ方向が主な目標と言いますか、主な路線と思ってますので、
たまーに甘いのが有るくらいだと思います(苦笑

今回はあまり陛下は戦いませんでしたね。
陛下はアレ、体術・短剣・下級譜術を使います。(オリジ設定含)
ファンダムでは体術を使っていましたので、プラスアルファ能力をつけておりますw
その方が戦いが盛り上がるので(笑

昴龍礫破は、シンクとかアニスとかが使うアレです。
今後、ピオニーのバトル創作設定などを上げていきます。


07/7/27(Fri)