ギンジを救出し、浮遊機関を入手した一行は、
急ぎ足でシェリダンまで帰還した。




09:急がば回れ


到着するなり、ギンジさんは急いでドックに向かう。
 「僕は先にじいちゃんに浮遊機関を届けに行くよ!」




―――ドック

「ギンジ!!もうダメかと思ったぞぃ!!」

「じいちゃん!ただいま!彼らが助けてくれたんだ!」
「ああ、ワシ等が頼んだんじゃ!本当に助け出してくれるとはッ!」

親子の再会も束の間。

「急いで浮遊機関を取り付けるぞ!」





一方、外では


「さ、我々も早くドックに向かいましょう」

「ああ!」


と、一行がドックの手前まで来たとき、なにやら見慣れた甲冑の男達が背後に見えた。

「おーっと。招かれざる者のお出まし、か」
「不味いですねぇ」


現れたのは、 キムラスカ軍の兵士だった。

「なんだお前達は!」

「その軍服!何故マルクト軍がキムラスカ領に居る!?」

「表に見えたマルクト船籍はお前達のだな!?」

「「「捕まえろ!!!」」」


「皆、早く中に!!」
ガイが叫んで、全員ドックの中に駆け込んだ。




「帰ってきおった!今、アストンが浮遊機関を取り付けておるぞ」



「怪しい奴!此処を開けろ!」

「何の騒ぎだぃ?」 「キムラスカの兵士に見つかってしまいました。」 「そーか あんたマルクトの軍人さんだったねぇ」
マルクト皇帝であるピオニーが共に目の前に居ることは伏せていた。

「なんだか変な気分だなー(笑」

「… 笑い事では有りませんよ」

陛下、とは言えないわけで、ジェイドも少しぎこちなさを感じていた。
その事を察してか、ピオニーはにやにやしていた。

そんな中でも、ガイは必死に扉を押さえていた。


「この街じゃもともとマルクトの陸艦も扱ってるからのぅ。こんな時期でなければとがめられる事もないんじゃが」

「そういえば、タルタロス、といったかいね。部品をごっそり頂いたよ。レアなものもあって、技師達も大助かりさ」
「お陰でタルタロスは航行不能です」
やれやれといった様子でジェイドが言う。

「全くだ。まぁ役に立って良かったがな」
ピオニーも続く。

「でもアルビオールがちゃんと飛ぶならタルタロスは必要ないですよねぇ」
アニスが言うと、

「わしらのアルビオールは、決して墜落なぞせんのだ」
と、何処から来る自信か分からない発言をされ、


「「……」」

((ついさっき墜落してたじゃねーか))
などとルークやガイが心中で突っ込んでいたりした。


「おい、扉が、壊されるぞっ」
扉を押さえていたガイが呻く。


「アルビオールの二号機は…」

「完成じゃ」
「急げよ」


漸く完成したアルビオール。

一行は急いで乗船に向かう。


それと同時にキムラスカ軍の侵入を許してしまった。

「くそっ!兵を…」
「時間が無いんじゃろ!?」
「急げ!」

留まり掛けた自分達の前に、年寄り達が立ちはだかり、押し寄せるキムラスカ軍と対峙を始めた。

「…皆さん、行きましょう!」
ジェイドの一声で、全員アルビオールの乗船に向かった。






―――アルビオール艇内




「はじめまして」


そう言って目の前に立つのは、可憐な美少女。

「ノエルと言います。兄に代わって、このアルビオール二号の操縦士をやらせていただきます」


「よろしくな、ノエル。兎に角、急いでセントビナーに向かってくれ!」
「はい。では皆さん、捕まっていてください!出発します!」







なんだかんだで一瞬の内に、セントビナーに到着した。


崩落の進むセントビナーは既に、首の皮一枚で繋がっているといった状態だった。


「おお!本当に戻って来おった!」
マクガヴァンさんと合流し、
全員で逃げ遅れていたセントビナーの住民達を、アルビオールに誘導する。

「これで、全員です!」

「アルビオール、離陸します!」



全員の協力によって円滑に行われた救出活動。
負傷者を出さずに、セントビナー市民の救出は無事終了した。


そして、 壮絶に

    ――――セントビナーが崩落した。



――――アルビオール艇内



そのまま少々重い沈黙が続いたが、やがて、マクガヴァンが口を開いた。

「セントビナーは… 一体どうなってしまうんじゃ…?」

その問に回答したのは、ティア。

「クリフォトに落ちた大地は、暫くの間瘴気の海に浮かぶ事は出来るでしょうけど、
 … やがて、大地も溶けて沈んでしまいます。」
「なんと…」
マクガヴァンもショックを隠しきれない様子でいた。
「どれくらいで沈んでしまうんじゃ…」
「恐らく、一月後には…」
「ホドの時と…同じか」
「…えぇ そうね」




どうしてそんな事になったのか。

ヴァンがイオンにユリア式封呪を解かせて、パッセージリングに何かをし、
外郭大地を支えていたセフィロトを消してしまったから。

その事実を知り、ルークは再び、自責の念に駆られる。


 (俺が… あの時、ヴァン師匠の言う事にのこのこ付いていかなければ…)

「俺は、俺は助けたいんだ!皆!これ以上…ッ!」

「ルーク!皆を助けたいのは、此処に居る者皆同じ気持ちです。
 ここで過去を悔いても、誰も救われませんよ。
 それに、何ですか。先ほどの貴方は、まるで駄々っ子ですよ」

「……ッ!」


ジェイドの一声で、ルークは黙ってしまった。


その様子を、ピオニーが見ていて、

(…なんだ。やっぱり、気に入ってるんじゃねーか。)
と、こっそり苦笑していたのに、ジェイドは気付かなかった。



「おじい様なら、セントビナーを救う方法を、知っているかも!」
「あ、ぁあ…!ユリアシティに行こう!」





そうして一行はアルビオールに大量のセントビナー市民を乗せて、

ユリアシティに向かった。











        

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読んで下さって、ありがとうございました!!

大分更新が遅くなってしまいましたっ!(汗
セントビナー救済編です!
まーったくもってピオジェが出てきません(笑
因みに、私は忘れがちですが、この場にはイオン様も居た、と思います(曖昧(オイ
とりあえず、この辺のドロドロした話はあまり好かないので
ちゃっちゃと流してしまおうと思っております(腐

次、ユリアシティ・シュレーの丘です。


08/3/16(Sun)