ユリアシティに向かう間、

アルビオールの艇内は
     ――ずっと ずっと 静かだった。




10:現状維持策



――ユリアシティ

アルビオールが着陸した後、セントビナーの市民を降ろし、
待っていたユリアシティの市長、テオドーロさんの指示で、ユリアシティの者が市民を先導していた。


「ご苦労じゃったな皆さん。私はこれからセントビナーの市民の受け入れ準備を済ませてくるので、また後程。」
「はい、頼みます」

そうして、テオドーロ市長も、街中の方へ姿を消した。


「……」

「では我々は、会議室でセントビナーを救う手立てを考えましょう」
ジェイドが切り出す。
「そうだな。セントビナーの大地が魔界の瘴気の海に沈まない内に、なんとかしないとな」
ピオニーがついて行く。

落ち込んでいるルークの様子を見て、マクガヴァン元帥が口を開いた。
「ジェイドが叱ったのは、お前さんを気に入ればこそだ。年寄りには気に入らん人間を叱っている時間などないのじゃからな」
それを聞いて、ルークは驚いたように顔を上げた。
ジェイドは、少し照れたのか、スタスタと行ってしまった。


「じぇーいど♪ 元帥に代弁されちまったなぁ」
嬉しそうについてくるピオニー。
「そんな事で浮かれてて良いんですか?陛下。貴方にはまだやる事が山ほどありますよ?」
ジェイドが黒い笑みを浮かべながら返す。
「まぁまぁ照れんなって♪」
「……」
溜め息と共に、二人が先に会議室の方に向かう。




「…叱られるって ずっと嫌なことだと思ってたのに」

「良いことでもないわよ」









――――――会議室



テオドーロ市長を囲み、セントビナーを救う手立てを考える。

ティアが何か良い案はないかと尋ねる。

「――難しいですな。ユリアの使ったといわれるローレライの鍵があれば或いは とも思いますが」

「なんだそれ」


「ローレライの剣と 宝珠の事を指してそう言うんですよ。
確か、プラネットストームを発生させる時に使ったものでしたね」

「ユリアがローレライと契約した証とも言われてるが」

ジェイドとピオニーが答える。


「ですけど、此処にはそのようなものは有りませんわ」
「ああ、それに探してる暇も無さそうだぜ?」

「ふむ… パッセージリングを操作さえ出来れば…或いは…」
「お爺さま、それはどういう事ですか」

「パッセージリングは創世暦の音機関。ヴァンがそれを操作しているというなら、
第七音素を扱える者に反応して操作が可能になっているのかもしれん」

「成程、それでセフィロトツリーを復活させることも、可能かもしれないという事ですね」
「はい」

「パッセージリングを操作してセフィロトツリーを復活させることが出来るってのか?」

ガイがテオドーロ市長に尋ねる。

「あくまで可能性ですが」



「っつーことは、セントビナーのセフィロトは…」


「シュレーの丘ね」

「行ってみるしかねぇよな」

ルークが決断し、一行はシュレーの丘に向かう。





アルビオールでセントビナー周辺までとび、シュレーの丘の手前で降ろしてもらう。



「ここが、シュレーの丘…」

「どこかにパッセージリングへ続く道の入り口があるはずです。」

ジェイドが指示し、皆で入り口を探すことになった。



「魔界の空はどす黒いな相変わらず…」
「陛下、貴方もサボってないで入り口を探してくださいよ?」
「俺は、あれが怪しいとみた。」

とピオニーが指差す先には、赤い石碑が。


「……… 貴方もたまにはまともなことを言いますね」

「失敬だな」

「ミュウ、出番ですよ」
「はいですの!」
「ちょっと待ったーっ!」

「… 今度はなんですか」
「俺にやらせろ。」
「何をですか」
「ミュウを持つ係。」


一同は唖然。


「お前よく見ろ。 コイツ何気に俺の可愛いあいつ等にそっくりだろ?? ふわふわの毛並みとか…」
「はいはいわかりましたどうぞご勝手に」
「ジェイド、お前は相変わらず可愛くないな」
「お褒め頂いて光栄です」

「「「「「……」」」」」

イオンを含め、PT全員がついていけない空気に思い悩んでいた。

「ボクはどうすれば良いですの????」

ミュウは一人困惑気味だった。


「よーしミュウ! あの石碑に向かって火を噴けー♪」

「はいですの!」


火を噴くと、石碑は消えた。




「それに良く似た赤い石碑なら向こうにも有ったぜ、旦那」

「それも消しましょう。行きますよ陛下」

「おー!じゃんっじゃんこい!」

「意味が判りませんよ陛下」

「おー!」



「ピオニー陛下のノリに… ジェイド以外誰もついて行けてない気がするのは気の所為か…?」
「寧ろジェイドはいつもどおりにしてるだけに見えるぞ」
「でも、あの大佐が押されてるなんて、なかなか見れない光景だよぉ」
「ガイは辛うじてついて行ってるんじゃないかしら…」
「え、そうかな… あんまり嬉しくない気もするが」
「いずれにせよ、調子が狂ってしまいますわね」
「なんかオーラが違うよねぇ〜」

「あはは、ピオニー陛下はあれで少し変わっているお方ですからね」


((((少し…???))))

皆で一斉にイオンの方を見る。




そうこうしているうちに、ピオニーが仕掛けを全部解き、パッセージリングへの入り口が現れた。

「お、あれじゃないか?」

嬉々としてルークが先頭を切る。

「あ、コラ!ルーク!俺より前を歩くな!!」
「ぁへ???」

そんなピオニーの様子を見てあきれ果てるジェイドだった。














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読んで下さって、ありがとうございました!!

シュレーの丘長いので一旦区切ります!非常に更新が遅れましたlll;
とりあえず、山が多いので、この先の話は少しずつ端折って最後までなんとかもって行きたいところです。

ピオニーは生き物基家畜が大好きなので、ミュウを持ちたくて仕方ありませんでした。(←公式だろうきっと
なのでミュウ係に進言してみたのでしたー。
皇帝の癖に呑気にも程があるピオニー。

次回はシュレーの丘後編と外殻大地帰還です。

08/8/30(Sat)